今年の7月にお札が新しくなって5ヵ月たつが、キャッシュレス化が進んだせいもあり、相変わらず新たなデザインに見慣れることがない。仕事柄それでも中で一番目にすることが多いのは渋沢栄一だ。
渋沢の言う「道徳経済合一」は、公益を追求する「倫理」と、合理的な判断の根底にある「利益」は両立を目指すべきものだという考え方だが、まだ若かった頃にこれについて読んだとき、建築設計という社会性の高い行為を行なう会社が商業的に立ち行くにはということを悶々と考えていた時期でもあり、強く啓蒙をうけた。それから幾年月、あいかわらず悩みは同じだが。
渋沢栄一にはその後またひょんなところで救われた。屋根の掃除中に転落というしょうもない事故の際、何件も病院を断られる中で急なオペに対応してくれた「東京都健康長寿医療センター」は渋沢が設立した「養育院」を前身とする施設だった。院内には渋沢資料館があり、リハビリの合間に何度か見学に行った。
なお、一昨年に社内イベントで皆で見学した飛鳥山の「晩香廬」は旧渋沢邸にあった清水建設による小ぢんまりとした洋風ティールーム。
とにかくいろいろなところに業績のある渋沢栄一には公私ともにあちらこちらで遭遇する。できればプライベートの財布の中でも頻繁にお目にかかりたいものだ。
【I.S.】
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