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新しい物事を一から学び直して理解することは、そのはじまりの多くが外部要因による受動的な結果であるためにひどく苦しい作業だが、物事を楽しむためには不可欠な訓練であると思う。そして、物事を理解していくという行為自体は能動的で自由な思考活動であり、実際に何かを学び問いて理解するという経験を繰り返すことによって、自分なりの理解の仕方や物事の楽しみ方を獲得し、それが次第に強化されていく。この効用は、学術的・技術的・芸術的な分野に限らず、日常的な衣服・食事・住居を楽しむことにも当てはまり、物事を楽しむための訓練は、誰しもが趣味・娯楽・オタ活の中で実践していることだと思う。


哲学者のスピノザは、物事を理解していく行為の効用を次のように述べている。「精神がものを理解することが多くなるにつれて、同時に精神は、理解の道をいっそう容易にたどるための他の新しい道具を獲得していく」。「精神は多くを識れば識るだけ、ますますよく自らの力と自然の秩序を理解する」。さらに、スピノザは「精神は自己自身ならびに自己の活動能力を観想する時に喜びを感ずる」とした上で、次のような指摘をしている。「我々自身を観想することから生ずる喜びは自己愛または自己満足と称される。そして、この喜びは人間が自己の徳あるいは自分の活動能力を観想するたびに繰り返されるから、各人は好んで自分の業績を語ったり、自分の身体や精神の力を誇示したりすることになるため、人間は相互に不快を感じ合うことになる」。反省とともに自戒したい。

【N.Y】

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