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CASE STUDY

CLTパネル工法用高耐力接合部の開発(グラウトジョイント)

開発の背景

CLT壁パネルは、10階建て程度までの高層木造建築物にも適用可能な構造材料ですが、それを実現するためには壁パネルと基礎や床などの周辺部材とつなぐ接合部に相応の剛性・耐力・塑性変形能力が必要となります。また、特に大規模木造建築物では現場でのスムーズな施工性を確保しておくことも重要で、建て方における誤差吸収機能を併せもつ接合部の検討が求められました。
そこで参考にしたのがRC造における異径鉄筋の機械式継手技術として確立されている「スリーブジョイント鉄筋継手」でした。CLT壁パネルの接合部にスリーブ金物を配置し、アンカーボルトM36をスリーブ内に挿入してグラウトモルタルを充填することで、定着するアンカーボルトの全強接合を実現するとともに、スリーブ内でのクリアランスによって一般的な木造建築物での許容値を超える誤差吸収機能を有する接合部が実現可能と見込まれました。

鋳鋼スリーブ

RC部との接合部

梁とスリーブ

壁パネル建て入れ

モルタル注入

課題

CLT壁パネルとして210mm厚を用いる場合、鉄骨梁勝ち仕様のCLTパネル工法として10階建て程度まで計画が可能ですが、中大規模木造建築物としての需要のボリュームゾーンとして4~5階建てまでを対象とする場合、パネル厚210mmはやや過剰で、150mm厚が合理的な断面設定となります。また、アンカーボルトもM27にサイズダウン、VE検討としてスリーブ金物もRC造で採用されている既製品に置き換えることなどによりコストダウンを図ることが、社会実装の観点から優先的に解決すべき課題と位置づけ、構造検討を実施しました。

・CLT壁パネル150mm厚を前提とした接合部の構造仕様の検討

・接合部の引張、圧縮、せん断の耐力性能に関する実験的検証

・5階建てモデルプランを用いた構造試設計

検討内容【検討期間:24カ月程度】

林野庁補助事業(事業期間2年間)として、主に以下の取り組みを実施しました。

1年目(2023年度)

① 架構・接合部構成の検討【1カ月】
② 各接合要素の基本構造性能およびグラウト充填性に関する実験的検証【4カ月】
・既製品スリーブ-挿入ボルトの引張性能,グラウト充填性の確認
・CLT壁パネル-スリーブ挿入ボルトの接合部引張性能の確認
③ 接合部仕様の絞り込み,選定【1カ月】
④ 選定した接合部に対する構造実験による耐力評価【2カ月】
・グラウトジョイント接合部全体の引張,圧縮,せん断実験
⑤ 5階建て集合住宅モデルプランの構造試設計によるプラン成立性の確認【2カ月】

2年目(2024年度

① 架構・接合部構成の仕様改良検討【1カ月】
② 1年目の未検証課題に対する実験的検証【5カ月】
・スリーブ接合を配置したCLT壁パネルの定軸力下水平加力実験
・CLT壁パネルが取り付く鉄骨梁の終局せん断性能確認実験
・グラウトジョイント接合部全体の終局せん断耐力性能確認実験
③ 5階建て集合住宅モデルプランの構造試設計によるプラン成立性の再検証【2カ月】

図1 グラウトジョイントを用いたCLTパネル工法 架構・接合部構成(例)
図2 グラウトジョイント接合部の構造仕様(例)
図3 構造実験の様子
図4 モデルプランの構造試設計 解析モデル

成果

・CLTパネル工法用の構造性能および施工性に優れた接合部として「グラウトジョイント」を開発した。
・5階建て集合住宅モデルプランへの適用性を検証した。

参考URL

・林野庁補助事業報告書(2024年度)

・林野庁補助事業報告書(2023年度)

関連論文

・スリーブに高強度グラウト材を充填したCLTパネル工法用の接合金物の開発
・グラウトジョイントを用いたCLT パネル工法引張接合部の汎用性拡大に関する検討
その1 架構・接合部構成と検討全体計画
その2 スリーブを用いた鋼棒継手の構造性能及びグラウト充填性の確認実験
その3 CLTグラウト接合による接合部性能確認実験
その4 スリーブ接合による接合部性能確認実験と設計用特性の評価
その5 架構のプラン対応力の確認

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