開設から60年以上が経過した南極昭和基地では、隊員が老朽化した建物を補修・改修して維持する一方、段階的な更新による施設の集約化・効率化と、新たなエネルギーシステムの構築を進めています。
その一環として計画された「夏期隊員宿舎」について、当社は意匠・構造・設備等の設計及び積算を取りまとめ、国内での仮組みの確認申請などの行政対応や仮組みの工事監理を行いました。
本宿舎は現時点で昭和基地最大規模の建物であり、今後の昭和基地の更新や整備方針においても規範となるため、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」にも鑑み、木造(一部鉄骨造)を採用しました。
昭和基地全体の今後の整備・更新計画や国内外の社会動向を踏まえ、「頑強性」「可変性」「高環境性能」「省施工」をコンセプトに、サステナブルな高木式木造を採用しています。

建物概要
| 所在地 | 南極昭和基地 |
| 竣工年 | 建設中 |
| 建築規模 | 3階混構造(鉄骨造+木造) |
| 主要用途 | 寄宿舎 |
| 延床面積 | 855.2㎡ |
| 構造種別 | 1階 : 鉄骨造、2・3階 : 木質パネル構造 |
| 建築・設計 | 日本システム設計 |
| 構造設計 | 日本システム設計 |
| 施工 | 極地研究所 |
全体計画
南極昭和基地での厳しい気象環境に耐えうる安全性と耐久性を確保すると共に、快適な居住空間を意匠・構造・設備の各分野の連携・協働計画がもたらす相乗効果により実現しています。
建物内部の用途変更や将来の設備機器の更新に容易に対応できる柔軟性と機能性を備えた施設計画を、システマティックに統合された建築部材を用いて行いました。
各分野ごとの設計上の配慮
■頑強性
強風に対して十分な耐風性能を持たせ、風下にスノウドリフト(雪溜まり)ができにくい形状を検討し、地形と建物をモデル化した上で、シミュレーション・解析を行っている。防火性能については、木材には適切な被覆をし、災害時の避難経路を確保した安全かつ高耐久な建物を計画しました。
■可変性
スケルトンインフィル(SI)の考えをベースに長期間の建物利用における更新性に配慮した構造体・内外装・設備等を計画しました。
■高環境性能
極地の気候に対応した高断熱・高気密な外皮(開口部含む)による省エネや居住性の向上を図る計画としました。
■省施工
日本から南極までのコンテナ・船での輸送及び隊員自らが施工するための適切なモジュール設定によるパネル化率を高めたシステマチックな工法としました。
構造・構法計画
1階を鉄骨造、2・3階を木造とした3階建ての混構造建築物です。
1階は最大スパン6mの鉄骨ラーメン構造による高床式とし、建物周辺に生じるスノードリフト(雪の吹き溜まり)の軽減を図りました。2・3階の木造部分は、断熱材や内外装材をあらかじめ取り付けた木質パネルを国内で製作して南極へ持ち込み、現地では床と壁を組み立てるだけで建屋が完成するプレハブ工法としています。
基礎は鉄骨柱の柱脚部に設けた鉄筋コンクリート造の独立基礎です。
参考URL
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立極地研究所 観測隊ブログ
2023年7月28日 新夏期隊員宿舎の仮組作業
2025年11月26日 新たな夏宿の建築 建築チームの活躍

