
Midply Wall Systemの開発 と
構造計算ルート2の検討
枠組壁工法(2×4工法)は、規格化された部材と面材耐力壁を基本とする合理的な構造形式として、日本でも長く普及してきました。一方で近年の中高層木造建築への展開においては、従来の仕様規定中心の設計手法だけでは対応が難しい場面も増えています。
当社ではこうした課題に対し、
✓ 枠組壁工法の耐力性能そのものを高める技術
✓ 中高層化を見据えた構造設計手法・制度の整備
の両面から技術検討に関わってきました。
本コラムではその代表的な取り組みとして、
Midply Wall Systemの開発 と 構造計算ルート2の検討(建築基準整備促進事業S24) をご紹介します。
参考:Midply Wall System(ミッドプライウォールシステム)の開発
photo Takumi Ota
高耐力化へのアプローチ
Midply Wall Systemは、北米で開発された高耐力型の耐力壁です。
一般的な枠組壁工法では構造用合板を壁の片側または両側に張りますが、
Midply Wall Systemでは
✓ スタッド間の中央に構造用合板を配置
✓ 両側からスタッドで挟み込む構成
とする点が大きな特徴です。この構成により
✓ せん断耐力・剛性の向上
✓ 壁厚を増やさずに高耐力化
といった構造的メリットが得られます。
当社の関与と技術的位置づけ
当社はMidply Wall Systemに関する検証・整理を通して、カナダ林産業審議会(COFI)による日本における枠組壁工法普及のための技術開発支援を行ってきました。
海外で開発された構法をそのまま導入するのではなく、
✓ 日本の設計実務に適用可能か
✓ 設計・解析上どのように評価すべきか
といった視点から、技術的な整理と検討を行うことが主な役割です。
なお、Midply Wall Systemが日本で注目されるようになった背景には、
NEESWOODプロジェクトにおけるE-Defence実験で採用された実績があります。
当社として直接関与したものではありませんが、実大震動台実験での適用は、本構法の性能を理解する上で重要な参考情報となりました。
技術開発から実建築への展開
当社では、こうした技術検討の成果を、実際の建築物の構造設計に反映しています。
その一例が、弊社HPでも紹介している
「花畑あすか苑」 です。

花畑あすか苑では、
✓ 高耐力壁としてMidply Wall Systemを採用
✓ 建物条件に応じた壁配置計画
✓ 必要耐力・変形性能の検討
を行い、技術開発に関与した成果を、実案件の設計に活かす形で構造設計を行いました。研究・検討に留まらず、開発に関わった技術を用いて中層・大規模木造の設計に活用されたことが特徴です。
設計手法の進化
― 構造計算ルート2(S24) ―
枠組壁工法の中高層化においては、構法の高耐力化と同時に、設計手法そのものの合理化も重要な課題となります。従来、枠組壁工法の構造設計は
✓ 仕様規定またはルート1に基づく構造設計(3階建て以下に限定) あるいは
✓ ルート3(保有水平計算)
が中心でしたが、中高層建築への適用を考えると設計プロセスが煩雑になりやすいという課題がありました。
―建築基準整備促進事業(S24)への参画―
こうした背景のもと実施されたのが、建築基準整備促進事業(S24)です。
枠組壁工法の設計プロセスを簡便化する方法として「構造計算ルート2の適用」が検討され、またその際に必要な大地震時の安全性を担保するための応力割増係数の策定が求められました。
―応力割増係数の考え方―
応力割増係数の検討では、
✓ 枠組壁工法建築物の耐震性能評価
✓ 実験・解析結果の整理
などを踏まえ、大地震時に必要となる安全余裕を設計に反映可能な形で係数化することを目的としています。過度に保守的になりすぎず、かつ安全性を確保するための実務的なバランスを重視した検討です。
―告示1540号への反映―
これらの成果は
2024年4月施行 建築基準法関連告示 第1540号 改正
として制度化され、枠組壁工法において構造計算ルート2が正式に位置付けられました。
これにより、中高層建築に対応したより簡便で合理的な設計ルートが整備されています。
技術開発と制度整備、その先へ
Midply Wall Systemによる構法の高耐力化と 構造計算ルート2による設計手法の整備は、
いずれも枠組壁工法を「仕様中心から性能を適切に評価する設計」へと進化させる流れの中にあります。当社は
・海外技術の導入支援
・国の制度整備事業への参画
・実建築への適用
を通じて、技術開発と実務をつなぐ役割を担っています。
当社の取り組み
当社では、
・枠組壁工法の構造計画
・Midply Wall Systemの適用検討
・構造計算ルート2を用いた設計支援
・告示改正を踏まえた技術的整理
など、研究・制度・実務を横断した構造設計支援を行っています。